小池都知事がよく使う「アウフヘーベン」の意味と意図は?
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小池都知事の言葉づかい
築地か豊洲かという、築地市場移転問題について、小池百合子都知事が「アウフヘーベン」というワードを使って解決策を説明されています。
【知事】はい。「アウフヘーベン」というのは、一旦立ち止まって、そして、より上の次元にという、日本語で「止揚」という言葉で表現されますが、これまで安全、安心、法的、科学的、さまざまなチェックが行われてきました。専門家会議も、この11日(日曜)にもう一度、休会していた会を開きます。そして、市場問題プロジェクトチームの非常に多角的な報告書をおまとめていただいてきたということでございます。 それから、「もう6,000億もつぎ込んだんだから早く移れよ」という乱暴な意見もよく聞くところでございます。さまざまな調査などを見ておりますと、「豊洲も良いけれども、安全にしてからお願いね」という方が一番多いんですよね。そこの部分はまだ達成されていないというのも、これはよく知らされていない事実だと思います。 ですから、そういったことを全部含めて、どう判断するかという、そのための「アウフヘーベン」が必要だということを申し上げた。
ここでは小池都知事は「「アウフヘーベン」というのは、一旦立ち止まって、そして、より上の次元にという・・・」という簡単な説明になっています。
アウフヘーベンという言葉は、ドイツの哲学者であるヘーゲルの思考法のひとつの弁証法の中に出てくるものです。
弁証法を簡単に示す例をあげると、
Aさんが意見aを主張し、Bさんは、aとは対立する意見bを主張し、お互いに議論しあって、両者の意見の良い部分を残しながら、新たな発展した意見cが得られるような流れを指します。
この時、aとbが否定され、cが生まれることをアウフヘーベンと呼びます。
図
一言でいってしまえば、「いいとこどり」ということになるでしょう。ただ、いいところを組み合わせるだけでなく、いい所を組み合わせて、新たなより高い次元に発展させるニュアンスが含まれます。
小池都知事が頻繁に専門用語を使う理由
小池都知事は、アウフヘーベン以外にも、横文字の専門用語を多用されます。
例えば、ワイズスペンディング、サスティナブル、ダイバーシティ、ソーシャルファーム、などなど。
社会へのインパクト
英語を多用することの狙いには、社会へのインパクトを狙っていることもあるでしょう。
まず、普通の人にはパッと伝わらないような英語や専門用語を繰り返し使うことにより、メディアで解説されたり、そのキーワードへの興味をきっかけに、政策内容に関心をひきつけることもあるでしょう。
また、横文字は流行コトバにもなりやすいので、社会へのインパクトを与えることで、小池氏自身への関心を常にひきつける効果もあるはずです。
これは、全く無名な人が、難解なワードを多用したところで意味はありませんが、小池氏のような、既に名の知られた人物がさらに注目を集める手段としては、難解なワードの使用は効果的だと思います。
何かダラダラと説明されても、見る側もしんどいですし、テレビの尺を考えても政治家が政策をじっくり語る時間はありません。
そうゆう意味でも、インパクトのあるキーワードに自身の考えを集約させて表現するのは、的を得た戦略だと思います。
ごまかしの手段
うがった見方をすれば、言い訳する逃げ道を作れるともいえます。
というのも、難解なワードは、簡単に説明することが難しいものや、専門家によって定義が異なるものがあります。
つまり、言葉に多様な解釈をもたせることで、意見をぼやかすことができ、後からいかようにも言い訳ができると言えましょう。
しかし、ある意味政治家的テクニックに長けているともとれます。 政治家は過去の発言も含めて、発言に一貫性を求められ、食い違いが生じたりすると、批判の対象になります。 だからこそ、多様な解釈が可能な、抽象的なワードを利用することで、そうした批判も受けづらくなります。