『理性の限界』は人間の頭脳の限界を学ぶキッカケになる いいね本!
図書館で一気に読み進めたのがこの本。「理性の限界」(高橋昌一郎)
本のスタイル:既存の理論の紹介、分かりにくい事をわかりやすく説明する本、会話劇
既存の理論とは、アロウの不可能性理論、ハイゼンベルクの不確定性定理、ゲーデルの不完全性定理の3つを指し、これらの一見難解の理論を、会話劇のスタイルで説明していく本だ。
この界隈の話をまったく見聞きしたことのない方が読むには苦労するかもしれないが、決して難しい数式や知識を前提としてはいない。各種理論が深く掘り下げられているというよりは、アロウの不可能性理論、ハイゼンベルクの不確定性定理、ゲーデルの不完全性定理とかって耳にしたことはあるし、ネットで調べたりもしたけど、イマイチ理解できないなぁという方にはピッタリの本だ。
書き方が特徴的で、科学者、カント主義者、会社員、大学生などなどさまざまな立場の人が会話するスタイルだ。これにより、この分野に馴染みのない読者を代弁するような箇所もあり、読みやすくなっている。スラスラ進めば2~3時間で読めるだろう。
著者があとがきで書いているように、著名な教授との雑談からこそ多くの示唆が得られたという事も会話劇のスタイルに影響しているのかもしれない。
肝心の内容の方だが、アロウの不可能性理論は「選択の限界」、ハイゼンベルクの不確定性定理は「科学の限界」、ゲーデルの不完全性定理は「知識の限界」をそれぞれ示すものだ。「選択の限界」は要は選挙のような投票システムの限界であり、「科学の限界」は科学で世界の運動を理解できる限界であり、「知識の限界」はあらゆるシステムの限界である。
何の学問の専門家でもない素人の私からすれば、さぞ世界の賢い大学教授などは私たちが理解できないレベルまで研究を進めていて、とんでもない発明や発見があるのだろうと考えてしまうが、3つの理論によりそんなことはないのだと悟る。
人間の頭脳に限界があるとはいえ、時間がたてばもっと多くのことが解決できるんじゃないか?とも思うが、3つの理論は要は人間の頭脳では解決不可能であることがあることを証明するのだ。
つまり、人間は何ができないか、が分かるのだ。